「あの・・・ちょっといいですか?」

いつのまにか目の前にやってきていた、ピンク色のクーシーに乗った方が口を開いた。
どうしよう、知らない方だけど何かの勧誘とかかな・・・・
思わず警戒しながらも無下にはできないので一応返事はしてみる。

「はい、なんでしょうか?」

「にわとりって何を食べるのかわかりますか?」

よく見るとその方の足元には鶏がちょこんと鎮座していたのだ。
しかもその子は普通の鶏よりも一回りくらい大きくてまるで七面鳥のようにも見える。
まあ珍しい!この子ったらグレーターチキンだわ!と心の中で叫んでしまった。

一瞬質問されたことを忘れてその鶏に見入ってしまったけど、ハッと我に返り答えようと考え込んだ。
たしか干し草を食べるはずなんだけどそれじゃダメなのかなと思いながら私は聞いてみた。

「干し草食べませんか?農家で売ってるんですけど」

「農家・・・・?」

その時、やり取りを見かねたのか、通りがかりのどなたかが目の前に干し草を放り投げた。

「ありがとう、そうそうこれです、これが干し草ですよ」

「おお、ありがとうございます」

二人でお礼を言ってからグレーターな鶏へ餌をあげることができた。
でもこれで解決したわけじゃない。

「じゃあ農家まで行きましょう。ブリテインにもありますからね」

そう声をかけてから私はブリテイン西の橋を超えて走り出した。
でもクーシーの方がついてこない、なんで!?
私は立ち止って振り返った。

すると鶏の歩みに合わせてゆっくりとことこと歩いている姿が見えた。
私ったらクーシーが走る速度に遅れないようにと全力で駆け出してしまったのだ。
うっかりしてたけど、特別に鍛え上げていない鶏の歩みは遅い、そんな初歩的なことを忘れてしまうなんてテイマー失格ね。
こうして、もう一度合流してからゆっくりとのんびりと、歩いてブリテイン郊外の畑に向かった。

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テイマーの能力で確認すると鶏の餌は穀物と干し草とのこと。
干し草はどれのことだかわかってるから穀物を与えてみようって話になったの。
まずは畑に生えていた小麦を拝借して与えてみてもらったんだけど食べてくれないみたい。

仕方ないので近くの農家で何か食べそうなものを見繕ってみたわ。

「穀物穀物・・・・当てはまりそうなのはとうもろこしかしらねぇ」

「よし、試してみますね。・・・・・・・とうもろこしは食べてくれません、尻込みしちゃうみたいだ」

「えー、とうもろこしって穀物じゃないのかなぁ」

他に売っている物も見てみたけど良さそうなものがなかったので、まあ干し草でいいかということにした。
普段は手紙を届けてと頼まれたり、通りがかりの人を街へ送り届けたりすることはあったけど、鶏の餌を探すお手伝いは初めての経験だった。
いつもの味気ないお仕事と違って今日はとっても楽しかったな。

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一仕事終えていい気分になったところで街に戻ると、評議会なるものがやっていると話している人たちがいた。
どうやらこの世界を治めている王様と色々な街の首長さまによる会議らしい。
一般の人たちでもでいる自由とのことだったので少しだけ覗きに行ってみることにした。

もう始まってるって聞いてたから急いで向かおうとお城の中を走っていたら警備兵に怒られちゃった。
もしかして捕まえられちゃうかもって思ったけど、警備の方はそれ以上怒りもせず歩き始めた私に向かってにっこりとほほ笑んでくれたの。
屈強な戦士さまの笑顔ってステキよね、私は思わずウインクを返しちゃったわ。

評議会室へ入るとなんだかお堅い雰囲気で、テーブルもないしお茶もお菓子もなかったからガッカリよ。
ちょっとしたパーティーなのかなって勝手に思ってたから期待外れだったな。

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神殿がどうこうとかって話が多かったみたいだけど、しょせんは人間世界の問題かな。
勝手気まま、自由に暮らしている私たちエルフにはあんまり関係のなさそうな話なんだと思う。
でもこっちの世界で盗賊になっている悪いエルフたちが大勢いるから、いつかその話題が出ないとも限らないかもね。
王様の怒りを買って根こそぎ討伐される前に改心してくれるといいんだけどなぁ。

それにしてもブラックソーン王って威厳もあってきらびやかな雰囲気もあってちょっとカッコよかったな。
これならたまに見に来てもいいかなって思っちゃった。
人間族やガーゴイル族と違って、エルフには国も王様もいないからちょっとだけうらやましかったのかもしれないね。


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その後普通の鶏を捕まえて餌を上げてみました。
その結果、干し草は食べましたが小麦やコーンはやっぱり食べません・・・・
穀物とはどれのことなんだろうって謎が深まった、そんなお話でしたー